西都市に移住した方の「はじめた物語」に焦点を当てているはじめるマガジン。今回は少し趣向を変えて、「移住+農業」という接点を持つ甲斐さん、平野さん、丸山さんの同世代3人に集まっていただき、お酒を片手に今の暮らしぶりについて話していただきました。
「美味い焼酎の話」から生まれた出会い
―まずはそれぞれの出会いから聞いてもいいですか?
丸山:僕と平野くんはもともとサーフィンつながりで、宮崎にはよく遊びに来ていたんですよね。
平野:海で知り合ったみたいなもんよね。20歳くらいからの友達だから、もう20年くらい? 経ちます。
甲斐:甲斐 僕が知り合ったのは2023年の7月あたりでしたかね。お2人が「くに鳥」(※西都市の居酒屋)で飲んでいて、僕はたまたま同じ店に母といて「逢初」が好きだという話をしていたら、平野さんが「もっとおいしい焼酎、飲みに行かへん?」と声をかけてきて。
平野:「逢初」も美味しいんですけど、あれは「月の中」やったかな。
(※編注:「逢初」はやまや蒸留所、「月の中」は岩倉酒造場がつくる焼酎。いずれも西都市でつくられている)
甲斐 僕も誘われたら断らないタイプだから、そのまま一緒にスナックに行って、そこで自己紹介(笑)。意気投合して、今や一緒に働いていますもんね。今朝はハウスに手伝いに行ったりしましたし。ほんと、ありがたいご縁だなぁって。
平野 甲斐くんがこっちに来たてで飲みに行く友達がいないって言うから飲みに誘っていて、よくここでバーベキューしてるんよね。
甲斐 そうそう、ここ(取材場所)は平野さんのお家なんですけど、リビングとベランダがつながったような造りになっていて、飲むにも最高で。毎日のようにふらっと集まってます。平野さんにはいろいろなことを教えていただいて。僕は農業の知見もなければハウスについても全く分からなかったですし、トラクターの乗り方もイチから教えてもらったり。ほんと、良い先輩です。
西都市の “ちょうど良さ” に惹かれて
―みなさんが西都市に移住して農家になった背景を教えてもらえますか?
平野:最初に来たのは僕です。もともと宮崎市のミニトマトの会社で5年ほど働いていて、独立して西都市に移ってきたんです。西都の友達が「ハウスが空いたよ〜」って連絡してくれて。
―結構身軽に移住されたんですね。
平野:いや、ハウスを借りるのが一番難しいんですよ。なかなか見つからない。あと宮崎には20歳ぐらいから正月や盆休みなんかにサーフィンで旅行に来ていたんで、いいところやし、飲めるし、海もすぐそこやし、鶏もうまい、牛も野菜もうまい、最高やなと。それで丸山くんも来たら〜って。
丸山:僕は前職、兵庫のほうで工場で働いてたんですね。その頃は契約社員だったのですが、契約社員って正社員と比べると給与が良くないじゃないですか。でも仕事はできるんですよ、僕(笑)。それなのに給与がなぁと転職を悩んでいたところ、平野くんが農業の話をしてくれて。
平野:丸山くんは僕が移住してからも、サーフィンしに遊びに来てて、そこでとりあえず来たら? みたいなノリで言うたんです。
丸山:農業のことは全く分からないけど、やったらやった分だけ結果の出る仕事の方が性に合っているだろうし、思い切ってやってみようかなって。
平野:そこから僕のところで2年間研修として働いていたんですよね。急に来ても家がないって、2ヶ月ぐらいうちに住んで。
丸山:同棲ですよ(笑)。
平野:30超えたおじさん2人が六畳一間の民家で寝てるっていう(笑)。
―若手芸人じゃないですか。甲斐さんのきっかけは?
甲斐:私は2人とは全然違って、前職は霞が関にある公益財団。日本語検定の人事、総務、経理といったことをやっていました。直接のきっかけは……実は、今日父が来てるんですけど(笑)。
(取材に同席されていた)甲斐さん父:私が結構前から息子に牧草を使った事業を手伝ってくれと頼んでいたんです。でもなかなか手伝ってくれなくて。2年くらい口説いてたかな。
甲斐:父が飼料にもなるし、バイオ燃料にもなる「バナグラス」という品種を育てていて、発電所に燃料を販売する、という事業をやっているんですね。でもずっと僕がしぶっていた。
甲斐さん父:それで一度宮崎に連れて行ったら「これはいいところやな」となってくれて。この環境にハマってくれたんやね。
甲斐 そう。でも正直、もっと早く来れば良かったと思いました。いいんですよ、西都。何が良いって、まず気候ですよね。あと水道水がめちゃくちゃうまい。この辺は地下水が上がるので、だから農家さんも多いというのもあるみたいです。あとは東京と比べると全体的にゆっくりしているので、落ち着きますね。東京にいた頃は、なんかずっとギスギスしていて。
―西都市と東京の環境の差がはっきり感じられたわけですね。
甲斐:そうですね。10年くらい勤続してたんですが、東京で暮らすことに疲れて、そろそろ節目かな、というのもありました。
丸山:僕ものんびりしてるところが性に合っとるなぁって思います。車の渋滞などに巻き込まれたらイライラするじゃないですか。そういうのもないし。
平野:人がそこまで多くないっていうのはいいですよね。あとこの家からハウスまで2分くらいなのですぐ仕事に取りかかれるし、集中できてる気がする。
甲斐:付け足すと、なんというか「ちょうどいい田舎」ということかもしれないですね。(宮崎)市内に出るのも遠くないですし、市内ほどごちゃごちゃしていない。それでいてこの空気と美味しい水がある、という。こっちに来てから趣味だった星を見に行くことも増えましたよ。西都原古墳まで車で5分くらいなのでそこで見たり、あと(鹿児島の)種子島も車で行けるんで、ロケットの打ち上げを見に行ったり。
―なるほど。では移住者が西都市の地域コミュニティを知ったり、打ち解けていくためにはどうすればよいでしょうか?
甲斐:それこそ、KOKOKARAさんに行くといいと思います。このマガジンのお話もKOKOKARAさんから頂きましたし、農地を借りるときも、市役所の農業委員会さんの協力があってこそでしたから。友達を作りたいということであれば、やっぱり飲みに行くのが大事だと思います。ここのコミュニティ以外の友達は、だいたい飲み屋がきっかけ。あと、なぜかわからないのですが「くに鳥」さんで出会う人は、いい人が多いですね。お母さんがお客さんを選んでいるのかと思うくらい(笑)。
―公的な施設であればKOKOKARAさんだし、街場レベルで言えば「くに鳥」さんということですね。
甲斐:ほんとそうですよ。この縁もKOKOKARAさんに行かなかったらなかったので。本当にありがたいことだなって思います。
―では最後に、今後やりたいことや目指していることを教えてもらえますか?
丸山:なんやろ。仕事だと、いかに現状維持できるかですね。単価とか結構変わるので。
平野:えーっと、この家を買ったので、ローンの返済ですね。
甲斐:(笑)。真面目に言うと、今の農地が10ヘクタールぐらいなのですが、とりあえず100ヘクタールにするのが目標でしょうか。なかなか農地がなくて難しいんですけど、それによって牧草の事業を大きくしていくことが大事だと思っています。