FROM SAITO CITY MIYAZAKI

西都市で新しいことをはじめるためのヒントが、ここで見つかる!

西都から世界の農業を変えるPROJECT

ボストンから来たプログラマー。
夫婦二人三脚で西都から農業の未来を変えていく。

プログラマー ケビン・ケントレルさん

10 Wed. August, 2022 KEYWORD
  • 起業・小商い
ケビン・ケントレルさん

プログラマー 西都歴1年

農業支援のデバイス「クロップウォッチ」の開発者。スマート農業の実現を西都から。そんな思いを胸に日々奮闘中!

  • 起業・小商い
10 Wed. August, 2022
西都市のお気に入りスポット

西米良に向かう道が好き! とてもリラックスできます。

 跡継ぎなどを含めた人員不足や、高度な技術が必要な作業が多く新規参入のハードルが高いこと、また栽培に関する知識が共有されづらい文化など、多くの課題を抱える日本の農業。近年、ロボットやAIなどを活用して省力化・自動化を図ったり、生育環境のデータを収集して効率化する「スマート農業」が、こうした課題解決への糸口になるかもしれないと注目を集めています。

 「西都市とボストンは少し似ているんです。歴史ある史跡が残っていて、町が大きすぎないところとか。僕は西都原古墳が好きで、よく二人で歩いています。」

 そう話すのは、2021年春にボストンから西都市に移住してきたケビン・ケントレルさん。ケビンさんは5歳のときに「『ゼルダの伝説』のようなゲームを作りたい」とプログラミングに目覚め、わずか12歳で起業した経験をもつ、異色のキャリアの持ち主です。ボストンの大手IT企業で勤務しながらコツコツと開発を進め、今年2月にスマート農業向けのシステムやデバイスを提供する企業を西都市で創業。現在は妻・池水彩さんとともにサービス提供開始の準備に追われています。

強みは汎用性の高さと安定性

 ケビンさんが開発した農業支援のデバイス「クロップウォッチ」は、農耕地の環境を効率的に管理・制御するシステム。クロップウォッチに接続されたセンサーを通じてデータを収集し、スマートフォンなどのデバイスで情報を確認したり、遠隔操作したりすることを可能にします。農業にIoT化をもたらす、来るスマート農業時代にぴったりのサービスと言えそうですが、営業やPRを担当する池水さんは「それだけじゃないんですよ」とその特性を説明してくれました。

 「仕組みを聞くと難しく思えるかもしれませんけど、たとえば土壌の温度に応じて水やりを自動で行えるようになる、というようなことなんです。ほかにも工場や狩猟、水道、オフィス、交通量調査といった幅広い分野にも活用できるのですが、いろんなことに使い道があるからこそ、なかなか説明が難しい。さまざまな年齢の方に使っていただくためにどうご紹介すればいいのか、まさに今模索しているところです。」

 ケビンさんが開発中の実機を見せながら、事例を付け加えます。

 「そうですね、では水道にしましょうか。日本の古い家屋だと、水道局の人が測って使用量を調べなくてはいけない旧式のものを使っている人も多いんですが、そういう場合にも、クロップウォッチを取り付けることでセンサーがデータを収集し、情報を可視化します。それだけではなくて、たとえば『夏に突然数日間まったく水道が使用されない』ということがあったとしたら、データから異変に気づくことができます。」

 クロップウォッチがどんなプログラミングで駆動し、どんな可能性があるのか。話しはじめると止まらないケビンさんを、池水さんは優しい笑顔で見つめます。

 「ケビンは思いついたら作らずにはいられない、根っからのクリエイター気質。日本での起業ということで言語のハードルもあるので、私の一番の仕事はとにかく彼をサポートすることだと思っています。事業を始めるにあたっては、色んな農家の方へ聞き取りをさせていただいたり、スマート農業のカンファレンスに参加したりと、私の方でニーズを調査してきました。面白かったのは、そのニーズがアメリカと日本で似通っていたことです。ケビンが着目していた小規模農家で言うと、日本のほうが数が多いので、こちらで起業することになりました。」

 池水さんは都城市の出身で、ケビンさんと出会ったのは大学時代にボストンへ留学していたときのこと。その頃から祖父母の住む西都市へ何度か訪れて気に入っていたそうで「彩もいるし、日本での起業にもそこまで大きな抵抗はなかった」とケビンさん。「町のサイズ感がボストンと近いし、自分には合ってると思います。農業が盛んでオーガニックな野菜が手に入りやすいところもいいですね。農業をITと掛け合わせることでこれから発展していく可能性があります。」

感覚ではなく、データで管理する農業へ

 大企業だけが利用可能だった最新技術を低価格で実現し、小規模農家でも利用できるようにすること。クロップウォッチの革新性と強みは、こうした点にあると言えます。どれだけテクノロジーが進化しても、利用コストが高いままだと、その技術の恩恵を受けられるのは巨額の投資ができる企業に限られてしまう。このような不均衡への着目から始まった開発ですが、半導体の供給不足で部品が購入できず、4〜5ヶ月ほど何も進められない時期もあったそうです。「でも、そのおかげでチップや部品の汎用性を高め、安定生産できるよう改良できました。トラブルは好きではありませんが、そこから学ぶことだってできます。」

 二人の目先の目標は、クロップウォッチのレンタル開始です。最初は難しく聞こえるかもしれないけど、とにかく使ってもらえさえすれば、この利便性にきっと気づいてもらえるはず。まずは西都市の方、そしてお隣の町へと少しずつ広めて、ゆくゆくは世界中の人に使ってもらえるサービスにしたい──。真っ直ぐな目でそう教えてくれたケビンさんと池水さん。テクノロジー一筋の純粋な熱意と、ものづくりへの献身的なサポートによって生まれた「クロップウォッチ」が農業を変える日は、そう遠くないことかもしれません。

クロップウォッチの詳細はこちら