FROM SAITO CITY MIYAZAKI

西都市で新しいことをはじめるためのヒントが、ここで見つかる!

未来を実らせる完熟マンゴーPROJECT

西都市がマンゴーの産地であり続けるために、憧れられる農家になる。

マンゴー農家 日髙健太さん

14 Thu. July, 2022 KEYWORD
日髙健太さん

マンゴー農家 西都歴21年

スターフルーツカンパニー代表。父のあとを継いでマンゴー農家をスタート。太陽のような情熱を持って完熟マンゴーのいろいろな魅力を発信中!

14 Thu. July, 2022

「僕には農業しかない」

 遡ること約25年前。今でこそ宮崎県の名産として全国的な知名度のあるマンゴーですが、当時は農家の数が少なく、「太陽のタマゴ」といった銘柄もあまり知られていませんでした。そんな時代に父親のあとを継いでマンゴー農家となったのが、スターフルーツカンパニー代表の日髙健太さん。こんなにも美味しくて、みんなを笑顔にする果物なのに、作り手が少ない。ならば、この希少性に懸けてみてもいいんじゃないか。そう直感したといいます。

 しかし、その直感が正しいと分かるまでには想像以上に長い道のりが待っていました。木に実がなり、経営が安定するまで、なんと10年。受け継いだ木の樹齢が、ちょうど実がならなくなる(と、あとで分かる)15年だったことや、生産者が少なくノウハウが不足していたこと。教科書のないマンゴーの木に、頭を抱える日々が続きました。本気で辞めようと何度も思いました、と苦笑いとともにその頃を振り返ります。

 「要は、誰もこの樹齢の木を育てたことがなかったんですよね。僕の例があったことで、やっぱり15年くらいすると実がならなくなるんだねってみんなが分かったというか。借金もめちゃくちゃあってとてつもなく辞めたかったんですけど、賢いわけでもないし、他にできることもなかったですから。もう僕には農業しかないだろうから、何とかしがみついてやるしかないという思いでしたね」

 契機となったのは、ぶどうや梨といった「樹齢の先輩」を育てる農家の方の「収穫量は気にしなくていい」というアドバイスでした。それまでは年によって着果量が変動する隔年結果の影響を警戒して収穫量を抑えていましたが、方向性を転換。生産量を多くして経営の安定を図るという考え方にシフトすることとなりました。

自然な完熟をじっくり待つ

 そんな暗中模索の10年を経て手にした​独自の味は、果実の繊維をしっかりと残した食感と、酸味と甘さの絶妙なバランスが特徴。徹底した換気で温度を保ったハウスで、自然な環境に近づけることで育まれています。通常は木に花が咲いてから約90日程度で完熟しますが、スターフルーツカンパニーではそこからさらに約2週間ほどを必要とします。自然な力で熟したマンゴーは実が締まり、豊かなコクと抜群の噛みごたえになるのだそうです。「もっと加温したり、化学肥料を与えれば早熟するんですけど、そこはじっと我慢です。じっくり育てることで果実をしっかり保ちつつ、甘ったるくないマンゴーになるんです。うちが1番こだわっているところですね」

農業にも働きやすい環境を

 現在7名の従業員が在籍しているスターフルーツカンパニー。西都市のなかではかなり大きな規模ですが、「上司と部下みたいな上下関係は苦手だから、あまり会社っぽい関係性にはしたくない」と日髙さんは強調します。強制力のある「会社の飲み会」はもちろんナシ。組織の結びつきよりも、気楽で人間関係のストレスなく仕事ができることが大切。また、各々の一日の目標を設定することで、勤務環境の向上を目指しているといいます。

 「農業をやりたい人には、自然に触れたい人が多いと思うんですよね。うちはその日のタスクをこなしてもらえたらOKで、終われば早く帰ってもらってもいいし、僕にきちんとした挨拶をしなくてもいい(笑)。人間関係で変にギクシャクしてほしくないんです。2月から6月は収穫や準備で忙しいのですが、あとはけっこうのんびりしていますよ。時間のある時はできるだけゆったりしてもらいたいんです」

農家を憧れられるような存在にしたい

 朝、出勤してスタッフに仕事を割り振り、昼は自分の作業や趣味のテニスをしたりして、自由に過ごす。夕方に進捗の確認と、片付けに戻ってくる。こうした余裕ある働き方は、従来の農家のイメージにはないものかもしれません。驚いていると「でも、本来は誰もが自由に農業ができるはずなんですよ」と日髙さん。生産性を意識して時間を作ることで、育てるだけではなく、販売やPR、そして新しい商品の開発にだって視野を広げられる。例えばこんなものも作ったんですよ、と頂いたのは「カットした完熟マンゴーとピューレのマンゴーアイスバー」。保存料、着色料、香料などは入れず、この農園で採れたマンゴーだけを使用したぜいたくな一品。ひとつ700円という価格ですが、催事などで販売するとすぐに売り切れる人気商品になったそうです。

 こうした姿勢はいち農家の範囲に留まらず、西都市の農業の未来にもつながってくるはずなんですよ、と語勢を強めます。

 「マンゴーの生産量はまだまだ増やしていきたいという気持ちは強いですし、これからマンゴーを作りたいって人がいたら一緒にやりたいって思っています。本当に応援したい。マンゴーの名産地として成立するためには、僕だけが作っていてもダメで、もっと色んな人に生産してもらわないといけません。そのためにも、憧れられるような農家になりたいですね。この面積で僕ひとりが必死に頑張ってボロボロになっていたら、誰も憧れないじゃないですか。余裕があってなんかいい雰囲気だなとか、可能性を感じてもらえないと」

 「僕がここでずっと農業をやってきて思うのは、西都市は宮崎県の中でも農業をする環境がとてもいいということ。塩害ももちろんなければ、大雨もあまり降らなかったり、災害が少ないところですし、農地も余っています。農業をするのにこんなぴったりな場所はなかなかないですよ。これからもマンゴー農家の可能性をもっともっと知ってもらえるよう、僕もアピールしていこうと思っています」