FROM SAITO CITY MIYAZAKI

西都市で新しいことをはじめるためのヒントが、ここで見つかる!

ご縁が紡ぐ笑顔のゆずPROJECT

“1000年続く村”から世界へ。
人々の暮らしと伝統文化を救ったゆず

ゆず農家 濵砂紳一郎さん

29 Fri. October, 2021 KEYWORD
  • 農業
  • 起業・小商い
  • あそび・趣味
  • 子育て
濵砂紳一郎さん

ゆず農家 西都歴7年

宮崎県宮崎市出身。ご縁が重なり西都へ移住。未経験からゆず農家となり商品開発も行っている。そのほか地域の人を結ぶ山の駅の運営や、東米良の広報活動にも取り組み中!

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29 Fri. October, 2021
はじめる人へのメッセージ

やりたいことがあっても、迷うことってありますよね。僕もうじうじしてなかなか進めないタイプですが、そういう人は「やらなくてはいけない状況」を作るといいですよ。難しいことがあれば周りに聞けばいいですし、とにかく動いてみることが大切。失敗しても何とかなりますよ。

西都市の中心地から4、50分の山峡にある、人口約200名の小さな集落、東米良の銀鏡地区。周囲に龍房山など1000m級の山々が連なり、深い緑に覆われるこの場所には、アニミズム信仰や狩猟、猪肉や山菜食といった文化が今も息づいています。とくに、地域の地理的・精神的な支柱でもある「銀鏡神社」の大祭で奉納される「銀鏡神楽」は、宮崎県で初めて国の重要無形民俗文化財に指定された、東米良を象徴する存在。過去にはこの神楽を題材とした写真集が刊行され、今年の春には神楽とともに生きる人々を描いたドキュメンタリー映画『銀鏡 SHIROMI』が公開されました。

未経験で飛び込んだ農家への道

そんな場所で育てられるゆずが、世界中の料理人から “yuzu” として熱い視線を浴びつつあるといいます。お話を伺うのは、銀鏡にある「農業生産法人 株式会社かぐらの里」に勤めるゆず農家・濵砂さん。穏やかな笑顔が印象的な、2児のお父さんです。


 「僕は農業未経験で、人生で農業をやることになるとは思ってもいなかったんですけど、7年ほど前、いろんなご縁があってここに来ました。最初は足手まといにならないようにって必死でしたね。当時は宮崎市内に住んでいたので、何度か通いました。実際に肥料をやったり、枝を剪定したりして育てていくと、おもしろくてやる気がどんどん湧いてきて。手入れした苗が木になると『あぁ、自分が育てたんだな』と親のような気持ちになったり、実がなってくれたときには嬉しくて、続けていく自信にもなりました」

 その “いろんなご縁”について尋ねると、コンビニのアルバイトをしていた頃、職場で出会ったのが現在の奥さんで、奥さんのお父様が営まれているのがこのゆず園だった、とのこと。一昨年ごろに「有機ゆずへの切り替えを手伝ってほしい」と声をかけられたことで、ゆず農家の道へと歩を進めていくことになりました。

 ゆずと銀鏡──。その関係性は長く、さかのぼること約50年前。主産業として長い間住民を支えていた林業が、木材自由輸入化の影響を受け、徐々に衰退し始めました。集落の存続に危機感を抱いた先代たちが着目したのが、もともと自生していたゆずだったのだといいます。
 「東米良はほどよく温暖で、ゆずに適した気候なんです。ただ、やっぱり最初は大変だったみたいですね。ゆず
の苗を植え始めた翌年に大寒波がきて全滅したこともあると聞きました」

 何度も困難に直面しながら栽培方法を改良した結果、1300本ほどで始まった苗木は、まだ実が採れない木を除いても6000本を超え、敷地は約12ヘクタールにまで拡大。さらに、生産者が自ら加工・販売まで担う、いわゆる「6次産業化」によって雇用を生み出したことで、今では宮崎県随一のゆずの生産地となりました。

皮まで余すことなく循環させる

 では、ここでつくられるゆずのこだわりは? そう聞くと「香りが全然違うところと、自然に配慮した農法を積極的に取り入れてきたところじゃないでしょうか」と濵砂さん。「ゆず本来の香りと味を届けたい」という先代の希望で数年前から有機栽培化をスタートし、昨年有機認証を取得。ゆずのはちみつドリンク「ゆずはっち」や、ゆず胡椒、ピール、果汁、甘納豆、ポン酢などがラインナップされた「PREMIUM」シリーズは、保存料等の食品添加物を一切使わない自信作です。最近、オーガニックな製品に関心の高い層に向けて、より洗練されたデザインへリニューアルしました。

 「このシリーズ以外も含めて、かぐらの里では自然に優しい農薬や肥料を使っています。化学的に良いところだけを濃縮した肥料は良くないし、なるべく自然な農法を行っていこうというのが有機栽培の考え方。だから使える薬や肥料は限られていますが、加工後のゆずの搾りかすを堆肥に変えたり、なるべく循環するように工夫しています。捨てるところが少ないのはゆずのいいところですね」

 かぐらの里ではトウガラシも育てていて、青ゆずとトウガラシをかけあわせて「青ゆず胡椒」にしたり、11月中旬に黄色に変化したゆずを「赤ゆず胡椒」や、「ゆず塩」に混ぜたりと、実から皮まで幅広く活用。素材のもつポテンシャルを商品に、農法にと最大限引き出しています。一番人気のゆず胡椒は、海外ではスパイスのひとつとして認知が広まっているそうです。
 
 現在、奥さんとふたりの子どもたちと、静かながらも充実感に満ちた暮らしを送る濵砂さん。ゆず農家であることの魅力を、こんなふうに教えてくれました。

 「食べた方から『ここのゆずは本当においしいね』と言ってもらえるのがやりがいです。いいものを作れたという自信にもなります。台風など自然の影響で落ち込むこともありますが、実がなり、収穫して、それを届けられたときの喜びや、お客さんから感想をいただけることが一番嬉しいですね」